(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

金は借りてるヤツが偉い

昨日の年金を手形として考えるで以下の部分に意外なほど反響がありました。

 手形の世界(年金の世界)では振出人が一番偉いから。「え?権利持ってるヤツが偉くないの?」と思ったアナタ。あなたは真っ当ですね。ただ真っ当だから騙されてますね。違うんです。手形の世界では振出人が一番偉いんです。

一般的には「金は貸した側が偉い」と思われているようでして、意外に思った人が多かったご様子。そこで今回はそこに焦点を絞って補足をば。

借金する側の方が守られている

意外なことにこれが現実。お金は貸す側より借りる側の方が権利を守られているのです。例えばこんなもんがあります。

  • 期限の利益

例えば「4月1日に返す」という約束をしたとします。この場合、期限は4月1日です。で、こういう約束をした場合に、借りた側は期限いっぱいまでに返す義務はありません。期限ギリギリでOK。これが期限の利益です。4月1日という約束をした以上は、3月31日に「返せ!」と言われても「約束の明日まで待て!」と断っていいですし、「返せるあてはあるの?」と突っ込まれても「ほっとけ!」と言えるわけです。極端な話、4月1日の23時59分59秒ギリギリまでは何してもよいのですよ。
でもってこれは完全に借りる側の利益。「期限までは貸す側は手だし無用」というわけで、借りる側の自由保護。一方貸した側にとっては介入制限なわけで、どんだけやばそうでも何にもできんわけですよ。「返してくれるだろう」と相手を信じるしかないわけです。非常にか細い立場ですねえ。

  • 破綻の自由

仮に期限がきたとします。お金を返さなくてはなりません。しかしお金がない。無い袖は振れません。こういう場合、借りた側は「返せません」とバンザイできます。「ねえもんはねえんだよ」と逆ギレできるわけですよ。しかもうまく逆ギレできるように法律が準備されているという。実に便利ですね。
バンザイの仕方はいくつかあります。「1万ずつ返すから許してちょ」みたいな任意整理、より法律チックに第三者を絡ませた民事再生、あるいは完全にバンザイして倒産あるいは破産。こんな感じ。で、これって借りてる側が選べるし、申請できるもの。貸した側が「ヲイヲイ、破産だけは勘弁してくれ」と言っても、借りた側が破産を申請し、免責が認められたら債務はチャラになる。貸した側にできるのは任意整理に同意しないとかいう「同意をするしない」といった程度で、隠密裏に破産されたらどうにもならんのです。借りた側が弁護士をたてれば本人を問い詰めることもできんしね。こういうケースで本人に直接アタックしたら違法なのです。……ま、破産するにも結構な弁護士費用がかかるので、本格的な貧乏だと破産すらできないのですが、一般的には貸した側って非常に弱いんですよ。おわかりいただけますでしょうか。

何故借りた側が強いのか

「お金を貸した側が弱くて、借りた側が強いのは理不尽だ!」
お怒りはもっともです。ええ、気持ちはよくわかります。しかし一応理由があるんですよ。ほら「盗人にもナンチャラの理」と言うじゃないですか。あの理があるんですよ。
その理由は、借りた側がお金を使うことで社会にお金が回り、経済が成立するからなんですよ。貸した側が持っているだけではお金が回らない。それを誰かが借りて使うから「金は天下のまわりもの」となるわけですな。お金に存在意義を与えるのは「持っている人」ではなく「使う人」なのです。
もうひとつの理由としては、金を借りるまでは貸す側が一方的に強いから。借りた以上は全部借りた側のペースであり、返すも返さないも借りた側の胸先三寸ですが、そこに至るまでは貸す側が全権を握っているのですよ。貸すも貸さないも自由。お金を渡す直前に「やっぱやーめた」で終わりですからね。
ですので、そうした強い状況の中でわざわざ貸した以上はちゃんと確認しましたよねと。相手を選んでますよね。「返してくれない」なんて泣きごと言わないよねっていう注意義務が貸す側にある。そういうことなんですよ。貸そうが貸すまいが自由であり、それを決めた以上は自分でケツ拭いてくださいね。そういうことなんです。
年金もある意味そうなんです。「あなたは国を信用してお金を払ってますよね」ということ。で、最終的に国を信用して失敗したとしても、それはあなたの責任ですよねということなんです。もちろん強制加入の制度だし、相手は国だしという制度なんで、信じてやむなしの部分も強いんですが、こういう貸し借りの根本を考えれば、「信用する方が悪い」ということは十分に言えるわけです。信用する方が悪いし、こんな制度に依存する方が悪い。冷たいけどそういうことです。そういう話なんです。
「お金を出すときは相手をきちんと選びましょう」が基本。相手が国ならば、常日頃ちゃんとした国会議員を選びましょうというお話。結局、政治の問題って選挙の問題に行き着くのよね。国が悪いと言う前に、悪い人間を国会議員に選ぶのをやめませう。