(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

複雑と単純を逆にして考える

これはスポーツを見て思ったことなんだけども、仕事とか一般生活でも汎用性がある気がしてる。

複雑なことは単純に。単純なことは複雑に。

なんかね、複雑な競技ほど単純に考えた方がうまくいくんですよ。そして単純な競技こそ細部で差がつくんですよ。競技性とその取り組み方は逆だとうまくいく気がしてます。
例えば野球。あの競技はルールがいろいろ複雑なわけですよ。役割もいろいろあるし。「打つ」「投げる」「走る」みたいに、様々な運動能力が求められる。とても複雑なスポーツ。
だからこそ、総花的に能力を上げるよりも、ごくごく単純に「瞬発力」に焦点を当てた方が効果的だったりする。「打つ」「投げる」「走る」のいずれも持久力より瞬発力。瞬間的な動き、反射神経、爆発力。これを瞬発力として考え、それを鍛えるという発想でやった方が、結果的に野球をする上での能力が身につくような気がする。複雑で多様な動きが求められるからこそ、細かい場面ごとの動きの練習より、どんな場面でも使いうる基本の能力、即ち瞬発力を鍛えた方がいい。
逆に陸上とか水泳は難しい。「走るだけ」とか「泳ぐだけ」みたいな単純な競技の方が奥深い。何でかと言うと、「走る」とか「泳ぐ」ってのは単純な運動だから、それ自体で差はつかない。特に大きな大会ではそうですよ。速い人ばっか集まっているわけで。基本的な能力に差はない。
じゃあどこで差がつくかというと、細かい積み重ね。スタートの反応、ゴールの仕方、ターンの仕方。こういうところ。鈴木大地はゴールの練習をしたそうですからな。「より早くタッチをするためにベストなひじの曲げ方は?」というところを研究したらしい。100m走なんかでも胸を出す出さないで差がつく。基本的なところに差がない競技は、細かいところで差がつくのですよ。「神は細部に宿る」とはよく言ったもんです。
で、こういうのって仕事の場面でも結構あると思うわけですよ。「複雑と単純を逆にして考える」という場面。

複雑な業務は大まかなポイントをつかめばいい

大雑把でいいんですよ。複雑なものは。どうせ全部わかりっこないんだから。また、わかったとしても効果的なポイントなんて限られてるんだから。「パレートの法則」ってあるじゃないですか。あれを思い出せばいいんですよ。

80%のものは20%のもので構成されている。ということは、20%のものに注力することで、80%の果実が手に入るんだから、それで良しとすりゃいい。もちろん、残りの20%だって大事だし。とれるもんならとっとけばいいけど、肝心要の80%をほっぽりだしてまでやるもんじゃない。まずは80%をガッチリつかむ。で、この80%をどれだけつかむかで、もうほとんど仕事の帰趨は決まったも同然なのですよ。80%がオッケーなら、その業務は大抵成功しとるわけで。
具体的には目に見えるところがまわっていればいいのです。見えないところはとりあえずほっとく。見えないんだからほっとく。見えるようになるまでほっとく。もちろん目に見える前にわかればそれに越したことはないのですが、あいにくそういう人を世間では「超能力者」と呼ぶ慣わしになっております。マイルドに言っても「天才」です。わしゃ凡人なのでそんなことはできませんし、自分ができないことを皆様にオススメするようなことはできません。
複雑な人間関係なんかもそうですな。人と人との関係は入り組んでおります。様々な感情が入り組んでいて、これはなかなかに厄介です。なので、こういうものは自分との1対1の関係だけ良くすればいい。自分を抜いた関係は知らん。これでよろしいかと思います。どうせ他人同士の関係をコントロールすることはできません。それならば、とりあえず自分を介した付き合いだけは良くしとく。これだけでよろしいのです。そしてどっちみちこれ以上のことはできません。こういうのは諦めが肝心でもあります。

単純な業務は細部をつめる

一方、一見シンプルな繰り返しにも見える単純な業務にこそ、細部の詰めが重要です。こっちは複雑な業務の逆で、もう80%は出来上がった状態。20%の力でなんとかなっている。問題は残り20%。ここを80%の力で取り組む。残りの20%は大したことのない量なのですが、根本的な80%の部分で差がつかないからこそ、20%の領域をどれだけ獲得するかで勝負が決まるわけです。
例えば、この時期はいろんな商売が子どもさん向けのサービスをやっとりますが、子どもさんの心をつかむのは本当に小さなことだったりします。ワタシがサービス業時代に心がけていたのは、必ず子どもさんと目線を合わせること。話の中身とかじゃなくて、物理的に。子どもさんの身長に合わせてしゃがむ。膝をつく。かがむ。これだけで結構違います。子どもさんに見上げさせてはいかんのです。怖がるし、同調しない。子どもさんは見上げては笑わないんですよ。目線を合わせないと笑ってくれない。
あとは、上の子どもさんをおろそかにしないこと。年の離れた兄弟とかだと、下の子にはアイスクリームがつくのに、上の子にはつかないみたいなケースがあります。そういうときに気を利かして上の子にアイスを出してやる。こういう細かい配慮が重要なんですよ。またそういうときは「他の子にはナイショだよ」みたいなことを冗談っぽく言うと、特別扱いされた気になり、さらにうれしさアップ。より効果的。意外とこういうサービスが大事なのよね。一見関係のないところ、どうでもいいところ、する必要のないところの積み重ねで差がついてくる。
人間関係なんかでもそうだよね。「……え?そこ?」みたいなところで嫌われたりするわけで。自分はまったく気にしてないポイントが、相手には凄く重要だった。大事な人ほどこういう傾向があります。大切な友人とか恋人ほど、どうでもいいきっかけで失ってしまうものです。それまでうまくいっていても、もの凄く小さな理由でサヨウナラ。「親しき仲にも礼儀あり」という言葉が胸に染み入ります。……うう。

価値観は逆にするといい

ま、こうしたことをスポーツをきっかけに気付いたわけですが、こういう「価値観を逆に」という発想は、新たな気付きを得るきっかけになるかと思います。行き詰ったときこそ、逆に考えて発想することで解決方法を見つける。複雑な事態であれば、とりあえず単純に考えて、一番の問題に全力に取り組む。あるいは単純な事態であれば細部を点検し、ひとつずつ潰していく。こういう発想がよろしかろうと思います。
とはいえ、口にするのはやすしで、行き詰ったときなんかは頭がいっぱいいっぱいなので、こういう発想に思い至らないものなのですがね。そこが一番の難点。「行き詰ったときに頭がいっぱいいっぱいにならない方法」を先に見つけるべきなのかもしれませんがね。難しいもんですなあ。